コラム
漢字語(한자어)— 日本語話者は語彙をすでに半分持っている
まず、韓国語をまったく知らないつもりで次の三つを見てください。
- 도서관 — としょかん
- 준비 — じゅんび
- 약속 — やくそく
図書館、準備、約束です。読めてしまったはずです。
これは偶然ではありません。日本語も韓国語も、中国語から同じ漢語を大量に借りました。日本ではそれが音読みになり、韓国では漢字音になった。出どころが同じなので、両者のあいだには今も対応が残っています。
そして韓国語の漢字音には、日本語にはない利点があります。一つの漢字は必ず一音節です。「学」が「がく」(2拍)になったり「がっ」になったりする日本語と違い、韓国語では常に「학」の一音だけ。だから対応が見えやすいのです。
規則1:2拍目が「く・き」→ 받침 ㄱ
| 漢字 | 音読み | 韓国語 |
|---|---|---|
| 学 | がく | 학 |
| 国 | こく | 국 |
| 食 | しょく | 식 |
| 席・石 | せき | 석 |
| 的・敵 | てき | 적 |
| 曲 | きょく | 곡 |
| 客 | きゃく | 객 |
| 特 | とく | 특 |
약속(約束)はこの規則が二回続いただけの語です。やく → 약、そく → 속。
規則2:2拍目が「つ・ち」→ 받침 ㄹ
三つのうち最も強力で、最も裏切られない規則です。
| 漢字 | 音読み | 韓国語 |
|---|---|---|
| 一 | いち | 일 |
| 日 | にち | 일 |
| 七 | しち | 칠 |
| 八 | はち | 팔 |
| 発 | はつ | 발 |
| 出 | しゅつ | 출 |
| 月 | げつ | 월 |
| 物 | ぶつ | 물 |
| 実 | じつ | 실 |
| 活 | かつ | 활 |
| 結・決 | けつ | 결 |
「つ・ち」がそのまま ㄹ に化ける、と覚えてしまって構いません。発音は はつ + おん で 발음、出発は しゅつ + はつ で 출발 です。
規則3:「ん」→ 받침 ㄴ または ㅁ
日本語は語末の -n と -m を区別せず、どちらも「ん」にまとめました。韓国語は今も分けたままです。
| 音読み | ㄴ になる語 | ㅁ になる語 |
|---|---|---|
| さん | 山 → 산 | 三 → 삼 |
| しん | 新 → 신 | 心 → 심 |
| かん | 間 → 간 | 感 → 감 |
つまり「ん」を見たら ㄴ か ㅁ のどちらかだと分かりますが、日本語の側からはどちらかを決められません。ここだけは覚えるしかない箇所です。それでも候補が二つに絞れるので、実用上はかなり大きな手がかりになります。
傾向:長音「-おう・-ょう・-えい」→ 받침 ㅇ
これは規則ではなく傾向です。当たるときはよく当たります。
- 東 とう → 동 / 工 こう → 공 / 場 じょう → 장
- 京 きょう → 경 / 生 せい → 생 / 中 ちゅう → 중
ただし外れます。高(こう)は 고、校(こう)は 교、報(ほう)は 보 で、いずれも받침がありません。日本語が二種類の音(-ng で終わる音と、母音が伸びただけの音)をどちらも長音にまとめてしまったためで、日本語の表記からは区別できません。
「長音なら ㅇ かもしれない」という程度に留めてください。規則1〜3のような確度はありません。
大前提:訓読みには効きません
ここまでの対応はすべて音読みに対してだけ成り立ちます。「血(ち)」「道(みち)」「月(つき)」の「ち・つ」は訓読みなので、ㄹ にはなりません。
見分け方は単純で、漢字二字以上の熟語はたいてい音読みです。この記事の対応が効くのはそこです。
なお、受け皿になっている ㄱ・ㄹ・ㅁ・ㅇ はすべて받침(パッチム)です。音として出す位置がまだあいまいなら、받침の記事を先に読むと、この対応表が音として入ってきます。
意味がずれる語
出どころが同じでも、意味は別々に動きました。よく引っかかるものだけ挙げます。
| 韓国語 | 漢字 | 実際の意味 | 日本語のつもりで読むと |
|---|---|---|---|
| 공부 | 工夫 | 勉強 | 「くふう」ではありません |
| 애인 | 愛人 | 恋人、彼氏・彼女 | 日常語で、日本語の含みはありません |
| 학원 | 学院 | 塾 | 学校法人ではありません |
| 식당 | 食堂 | 飲食店全般 | レストランも含む広い語です |
| 기차 | 汽車 | 列車一般 | 蒸気機関車に限りません |
애인は特に注意する価値があります。韓国語ではまったく普通の言葉で、日本語の「愛人」が持つ含みはありません。
逆方向のずれもあります。「値上げ」は韓国語では漢語の인상(引上)です。日本語が和語を使う場面で韓国語が漢語を使うことがあり、その場合は音からは辿り着けません。
明治の日本語が韓国語に入っている
사회(社会)、경제(経済)、과학(科学)、철학(哲学)。これらは近代日本で西洋の概念を訳すために作られたり、意味を与え直されたりした語で、そこから韓国語にも中国語にも広がりました。
つまり対応が良いのは古い漢語だけではありません。近代語・専門語ほどよく一致します。抽象度が上がるほど日本語話者が有利になる、という珍しい構造です。
ニュースがいちばん報われる
新聞記事は漢字語の密度が最も高い文章です。日本語話者にとっては、そこが最も楽な場所ということになります。
| 韓国語 | 日本語 |
|---|---|
| 정부 | 政府 |
| 발표 | 発表 |
| 조사 | 調査 |
| 확대 | 拡大 |
| 증가 / 감소 | 増加 / 減少 |
| 지원 | 支援 |
ほぼ一対一です。会話文より記事のほうが読みやすい、という逆転が起きます。
やること
新しい長い単語に出会ったら、丸暗記する前に音読みに戻せないか一度試す。それだけです。
- 필요 — ひつ + よう。規則2で ひつ → 필。必要。
- 만족 — まん + ぞく。規則3と規則1で 만 + 족。満足。
- 경험 — けい + けん。けい → 경、けん → 험。経験。
もちろん外れることもあります。それでも、外れたものだけを覚えるほうが、全部を一から覚えるより速いはずです。
試す場所は記事です。最近のデイリー版を開いて、長い単語だけ拾って音読みに戻してみてください。思ったより多く当たります。